ありがとう。なかよくね。さようなら。
                                 内科医  納  利 一 70歳
 「生きながら 死人となりてなり果てて 思いのままにするわざぞよき」これは江
戸の至道無難禅師(1603〜1676)の歌である。「生きたままで死人になり切る。そ
のうえで思う存分に生きるというやり方のなんと楽しいことよ」仏教名言辞典(奈
良康明編著、東京書籍)にこう解釈してある。
 今日まではお話しできるが、明日は目が覚めない。今日が我が生涯の最期の
日だとしたら、どのような言葉を残されますか。不安にかられて来院される患者
さんに最期のメッセージを考えてもらう。最期のメッセージを発表することで、こ
れからを死んだつもりで気楽に生きていけることになる。
 多くの方々が「ありがとう。」、「なかよくね。」とおっしゃる。「私が今日まで生か
されてきたのは生涯に出逢えた皆様方のおかげです。ありがとう。皆様方なか
よく、気楽に暮していって下さい。兄弟姉妹なかよく、親戚なかよく、人々なかよ
く、国々なかよく、みんななかよく。なかよくあれば、なにもいらない。なかよくね。
さようなら。」
 弱肉強食は動物の世界、人類の世界が競争勝敗の世界から止揚和諧の世
界へと進化して、人間、社会、自然が「なかよく」調和する地球的調和時代とな
り、それが永続していくことを心から願いつつの最期です。「では、さようなら。」
                                  2010(平成22)年7月19日
この文章がライフサイエンス 2010 Vol.36 NO.3 第42号 平成22年8月 生命科学振興会 発行に転載されました。
甲突川最期のメッセージ
甲突川希望のメッセージ