内科医  納  利 一 (66歳)
 我は天年 宇宙は無限
鶴は千年 亀は万年 我は天年
組織の永続 人類の悠久 地球の永遠 宇宙は無限
我は天年 宇宙無限の中にあり
 鶴は千年、亀は万年、我は天年。この最初の一行は江戸時代に八十八歳まで生きた仙涯和尚の双鶴画賛である。
天年とは自分の一生を精一杯生きるということであろう。組織の永続、人類の悠久、地球の永遠。これは願いであり
努力目標である。しかし、いずれにも終わりがあるはずである。宇宙は無限。これは本当のような気がする。時間的
にも空間的にも限りがない。
 我は天年、宇宙無限の中にあり。地球に終わりが来ても、私たちを形づくっていた物質は星くずとなつて、宇宙の 
中をただよい、またいつか新しい星ができるときの材料の一つになることであろう。そしてその星にまた新しい生命
が発生するかもしれない。この地球もその昔、宇宙の中の星くずが集まってきたのかもしれない。そしてそこに生命
が発生し、人類が誕生し、いろんな組織ができて、その中に私たちは生かされている。私たちの一人一人は過去と
未来の「かけはし」として束の間の現在に生かされている。
 我は天年、宇宙無限の中にあり。
 加藤徹著『漢文力』(中央公論社 2004年発行)に啓発されて、この文章ができた。この地球を生命をはぐくむ星と
して永続させたい。どう考え、どうしていけばよいか。人間とは何か、社会とは何か、自然とは何か。正解は古典に
あり。古典に学び、あすをひらこう。
                                  漢方の臨床 第53巻1号(2006) 新年のことば より転載
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