「世界平和」は共生の道から
                                       内科医  納  利 一  (66歳)
 戦争は社会の病気である。敗戦後60年が過ぎた今、社会は健康になったとい
えるであろうか。
 私は幼時に戦中を体験し、小学一年生より戦後の学校教育を受けた。祖母た
ちからの昔話、明治生まれの父や父の友人たちが日本の行方を心配して話して
いたことなどを思い出す。「負けたのだから賠償金を払って貧乏になってもよい。
しかし教育だけは戦勝国の言いなりにさせてはいけない」などど。
 アメリカ式の競争社会は東洋人の体質に合わないのではないか。「修身(しゅうしん)斉家(せいか)治国
治国(ちこく)平天下(へいてんか)(出典・大学)という言葉がある。世界平和は自分自身の安心から、
という意味であろう。どうすれば安心できるであろうか。
 勝者にも敗者にも安心はない。強くはなれなくても、みんなの中で自分も「かけ
がえのない一人」になりたい。そう願いつつ歩く共生の道が安心への道ではなか
ろうか。
                     南日本新聞 「ひろば」 2006(平成18)年2月9日 より転載