す い 臓 を 大 切 に  
       「消化器の疲れ」からいろいろな症状
                                   内科医  納  利 一  55歳
 むかし慢性胃炎、いま慢性すい炎と言われるほどに慢性すい炎が増加している。
なぜだろう。食生活の洋風化などすい臓に厳しい生活習慣のためもあるが、腹部
超音波検査の普及など診断法の進歩によるところが大きい。以前なら慢性胃炎と
診断されていたであろう患者さんの多くが慢性すい炎、またはその手前の病態
(すい降密・慢性胃炎または消化器の疲れ)であることが分ってきた。
すい臓からの悲鳴
 「胃が痛いのです・・・」「おなかが張りますが・・・」ー。
すい臓が障害されるなど。消化器が疲れてくるといろいろな症状が出てくる。
 「おなかがすくとみぞおちのあたりがシクシク痛み、食べると左上腹部から左背部
にかけて張るような何とも言えない気持の悪い痛みが出てくるのです」「整形外科
でレントゲン写真などを撮ってもらっても異常なし。針やきゅうをしてもらっても、少
しは良いようだが、はかばしくない。内臓からの痛みのようだからと、針きゅう師か
ら内科受診を勧められました」「おなかがすいても痛い。食べても痛い。次第に食
が細くなり、体がやせてきます。胃がんではないでしょうか」「胃の透視をしてもら
ったのですが異常なし。念のために胃カメラまで、「こんなにきれいな胃が痛むは
ずはありません」と言われました」「血液の検査なども正常範囲内。神経性胃炎と
診断されましたが、どうもスッキリしません」「消化器内科に通ってもなかなか症状
が消えないため、心療内科に紹介されました。心身症として治療してもらっている
のですが、だんだん頭までおかしくなってしまいそうです」
 おなかの検査はまず超音波(エコー)から
 昭和52年2月新しく開発されたばかりの電子走査型超音波診断装置の試作品
に出合った。深触子(プローブ)をおなかに当てるだけで、おなかの中の様子が見
えるではないか。その時の感激を忘れることはできない。わたしたち医師にとって
なくてはならない道具の一つになると直感した。即座に注文し、昭和52年9月より
使用している次第である。
超音波映像下圧診法
 すい臓を深触子(プローブ)で圧迫すると、患者さんたちは異口同音に言われる。
「そこです。そこです。長年わたしを悩ませているのは。そこに何が写りますか」。
超音波で写る臓器に押さえて痛みがあるかどうかをたずねることを「超音波映像
下圧診法」と名付けた。
 すい障害・慢性胃炎
 すい臓に障害のある患者さんはすい臓の部位に一致して圧痛や打痛があるば
かりでなく、左半身、左の首すじから左足の先まで圧痛や自発痛があることが多
い。症状はあるが検査では異常がないため、「慢性胃炎」として胃薬や消化剤な
どを服用してもらっていた方々である。
 すい安静療法
 従来、「慢性胃炎」と診断されていたもののうちですい臓を中心に消化器を休ませ
るような治療をすると症状が軽快し、元気になるような病態を「すい障害・慢性胃炎」
または「消化器の疲れ」と呼ぶことにしている。この病態の治療法に「すい安静療法」
という名前をつけた。すい安静療法とは、、食事療法を中心とした内科的治療方法
のことである。
           1995年(平成7年)7月16日 鹿児島新報 健康クリニック より転載