環境保護に思う
       活動従事の義務化提唱
                                 内科医  納  利一  (50歳)
 交通と通信の発達で、世界が時間的に小さくなり、国境の壁が低く感じられるよ
うになってきた。戦争への備えを必要としなくなる時代の到来が現実味を帯びて
きつつある昨今である。
 戦争の恐怖に代わって、人々の心に深い影を落としはじめているのが環境問
題である。そこで、「この地球を生命をはぐくむ星として永続させたい」という思い
が、人類共通の願いとして浮上してきつつある。
 かって、国防のために兵役の義務があったように、人類共通の願いを実現す
るために「自然保護活動従事の義務」とでもいえるものがこれからの地球人に
必要となるのではなかろうか。
 人生80年時代、一生のうちの一定期間、自然保護活動に従事する。山に入っ
て森林の手入れをしたり、自然のリサイクルの中での有機農業に従事する。ま
た、各自の体力や能力に応じて、自然の健康のために奉仕するわけである。
 これが実現すれば、地球の健康のためになるばかりでなく、社会の健康のた
めにもなり、人間の健康のためにもプラスになっていくことであろう。
 約1万年前、農耕・牧畜を始めたころから、人類は地球の生命にとってのガン
組織になったといわれている。せめて中期ガン程度にとどまり、人間と社会と自
然が調和していく道を歩いていきたいものである。
                1990(平成2)年8月8日 南日本新聞 「ひろば」 より転載
もりづくり甲突川