「いのち」をはぐくむ川づくり
                               内科医  納  利 一  (49歳)
 葉桜やクスの若葉が美しい季節となった。高見橋から天保山橋までの緑地帯は
格好の散歩道。高麗橋周辺の護岸工事が終わり、階段ができて、川の水に手を
触れることができるようになった。水辺の石に腰を下ろして石橋を下から見上げる
こともできる。川が急に身近なものになった。日が暮れるのを忘れて、魚を追いつ
つ、水と戯れた少年時代がよみがえってきた。
 魚影が見え隠れする。今泳いでいる魚は、少年のころ追いかけた魚の子孫であ
ろうか。今泳いでいる魚の子孫が百年後も甲突川にすんでいるであろうか。
 毎年毎年大量に放流しなくても、いろいろな生物の「いのち」が、次々と生まれ、
はぐくまれ、連綿と続いていくような川にしたいものである。
                  1989年 平成元年5月19日 南日本新聞「ひろば」 より転載
もりづくり甲突川